イジワル社長は溺愛旦那様!?

「――朝陽くんにだいたいのことは聞きました。この四年、姉弟ふたりで生きてきたのだとか」


やはり朝陽は神尾に話していたのだ。

軽く落ち込みながら、夕妃はうなずいた。


「三か月前にあなたの職場にやってきたのが、今回の結婚相手で、親会社の重役の息子。あなたを一方的に見染めた彼は――オブラートに包まずに言えば、たくさんいる恋人のひとりにしてやろうかと誘ってきた。だがまじめなあなたは、『そういうのはいけないと思います』と断ったそうですね?」


(……朝陽くん、そこまで言っちゃってるの!?)


神尾が口にした内容は、正しい。

目を丸くする夕妃だが、神尾はさらに言葉を続ける。


「断られたことでむきになった彼は、あなたに逆に執着してしまった。まぁ、よくある話です」

神尾はにっこりと微笑みながら、夕妃の手ごと、自分の手を口元に引き寄せる。
そしてもう一方の手で夕妃の頬から零れ落ちる涙をぬぐった。


「ただあの男がゲスなのは、最終的に、あなたの家の状況をしらべあげて、朝陽くんの将来と引き換えに、あなたを得ようとしたことですね」


(げ……ゲス……)




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