イジワル社長は溺愛旦那様!?
きれいで端整な笑顔を浮かべる顔立ちの彼から、ゲスという単語が出ると、言葉以上に悪く聞こえて、ドキッとした。
「――いくら外堀をうめたところで、あなたの心が手に入らなければ意味がないことでしょうに……違いますか?」
眼鏡の奥の切れ長の瞳が妖しく輝く。
引き寄せられた手に、かすかに神尾の息がふれた。
そんなはずはないのに、指にキスされたような気がして夕妃は顔が真っ赤になる。
慌てて掴まれていた手を引っ込め、あご先に残った涙をふいた。
「――」
一瞬神尾は微かに目を見開いたが、すぐにすっとにこやかな笑顔になった。
「あなたたち姉弟は私が守ろうと思います」
(え……?)
朝陽が神尾を利用しようと考えていることに反発した夕妃だが、まさかとうの神尾まで、そんなことを言い出すとはおもわなかった。
夕妃は慌ててブロックメモに書きなぐる。
【そんなことをしてもらう理由はありません】
【弟があなたになにを吹き込んだかはだいたい想像がつきますが、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいきません】
【明日出て行きます】