イジワル社長は溺愛旦那様!?
上司と部下を、たまには忘れて
「そ、それでどうなったのっ……?」
かぶりつきで顔を寄せてくる始に、夕妃は苦笑しながら、まぁまぁと手のひらを向ける。
「とりあえず今日はここまでということで……」
気が付けば小一時間経っていた。
さすがに始が忙しい身であることは承知しているので、夕妃は話を打ち切ることにした。
「ええーっ、ゆうちゃんそれは蛇の生殺しだよぉ~」
始はきれいな眉をハの字にしつつも、ひょいっとテーブルの上にあった請求書を手に取り、それから名残惜しそうに立ち上がった。
「じゃあ次、絶対、近いうちに聞かせてね」
「はい。ごちそうさまです」
夕妃も微笑みながらうなずく。
「いやいや、じゃあまたね」
会釈して始を見送りながら、夕妃はカップに残ったコーヒーを飲み干した。
(あんなことがあって、たった半年でこうなってるんだもの。本当に人生って不思議だ)
始にこの話をする“近いうち”がいつ来るかわからないが、始に話すことによって、夕妃も懐かしい気持ちにかられていた。