イジワル社長は溺愛旦那様!?
「どこか打った?」
湊は身をかがめて、夕妃の膝のあたりを覗き込んだ。
その瞬間、ふわっと、湊が使っている香水の香りがして、懐かしいような、寂しくなるような、不思議な気持ちになった。
(なんでだろう……十二時間程度離れただけで、こんな気持ちになるなんて、恥ずかしい……)
「だっ、大丈夫……!」
夕妃はブルブルと首を振る。
「そうは言っても、きみはそそっかしいところがあるから」
湊はそのまま夕妃の膝を撫でて、すっと立ち上がると、両手で包み込むように夕妃の頬を挟むと、親指で唇の上をなぞる。
「泊まってくると思ってた?」
「うん……」
「結婚してから、外泊なんかしたことないだろう」
「そう言われれば、そうでした」
「俺は夕妃をひとりにしないよ」
湊はクスッと笑うと、そのまま唇を夕妃の額に押し付ける。
両腕がそのまま背中にまわる。
チュ、チュと湊からキスの雨が降るが、湊の唇は夕妃の唇になかなか触れない。
(意地悪されてる……! おのれ~湊さんめーっ!)
夕妃は湊の胸元にぎゅっとしがみつくと、最後、鼻先に落とされた唇にそのまま噛みつくように自分から唇を押し付けた。