イジワル社長は溺愛旦那様!?

「そうかな?」
「そうだよ……」


夕妃が笑ってうなずくと、湊も笑って、夕妃にキスを落とす。
わかっていてそうやって遊ぶのは、楽しいことだ。

夕妃は湊と出会うまで、男性とは学生時代の、プラトニックな付き合いしかなかった。
むしろおとなしそうな容貌のせいで、十代からやたら痴漢にあっていたから、男性不信も極まっていた。

朝陽は別として、男性を信じられるようになったのは湊のおかげだし、湊と出会わなければ、男性はいつも自分を思い通りにしようとする最悪な存在だと思い続けていただろう。


(いい人も悪い人もいるって言われればそうだってわかるけど、そのいい人は、私の世界にいないものだと思っていた……湊さんに出会えて、本当によかった)


結婚式の誓いから逃げ出した先にいた湊は、確かに夕妃にとって王子様だったはずだ。



――そう……王子様だって、思ったのはいつだったっけ……。


きっと始と話したことで過去の記憶が触発されたのだろう。

夕妃は湊から与えられる甘い口づけをうけながら、湊と初めて、唇でキスした日のことを、思い出していた。



―――・・・




「あなたにキスしたい。いやなら俺を突き飛ばして逃げてください」



それは突然の求愛だった。


< 83 / 361 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop