イジワル社長は溺愛旦那様!?

「うん。姉ちゃんの洋服とか着替えとか、全部つめて運んでもらった」


(いつの間に……)


しれっとうなずく弟に夕妃は真顔になる。


「使いそうなものは全部運んだから大丈夫」


(朝陽ったら……なにが大丈夫よ)


夕妃はため息をつくしかないが、人懐っこい朝陽を湊は悪くは思っていないようだ。
なんだか楽しげに、夕妃がまったくわからない車の話で盛り上がり、そして駐車場に停めているピカピカの車を見て、また謎の単語を羅列しはしゃぐ朝陽を見て、にっこりと笑っていた。


(やっぱり神尾さんって、ものすごーく優しくて、大人で、博愛主義なのかもしれない……)


そうでなければ、こんなことにならないだろう。

夕妃は涼し気な神尾を見上げながら、どうしたらこの御恩を返せるのだろうと、不安になってしまった。



彼がひとりで住むマンションは、最上階でやたら広い吹き抜けの上に、一階と二階に別れていて、プライベートが完全に保たれるような超高級マンションだった。
マンションの部屋の中に階段がある物件を初めて見た朝陽と夕妃は、部屋のキーをそれぞれに貰い、部屋を与えられた。

湊が一階を使い、二階を姉弟で使わせてもらうことになった。


「うわーめっちゃすごい眺め~」


一足先に二階に上がったふたりは、それぞれの部屋を見て回る。


【学校はどうだったの?】


まだあれこれ受け入られない夕妃は、窓に張り付いて外を眺める朝陽の背中をバシバシと叩いて、問いかける。

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