イジワル社長は溺愛旦那様!?

「で、姉ちゃんの職場のほうは、どうせ一週間休み貰ってたわけだし、とりあえずここで今後どうするか考えよう」


【職場戻れないかな】


「そりゃ無理だろ。親会社の重役の息子だもん」


朝陽の言葉はもっともで、確かにあの結婚式の場所には、夕妃の務めている会社の役員も数人出席していたのだった。

せっかく入った会社なのに、辞めなければいけないと思うと夕妃は気が重くなる。


【仕事探さなきゃ】


「そんなのはあとでいいよ。とりあえず体を治すことが先決だろ。幸い貯金もあるあし……」


【でも声が出ない】


「姉ちゃん、焦るなって……」


朝陽が少し困ったように笑ったが、これが焦らずにはいられようか。
これから先どうやって生きて行けばいいのか、まったく思いつかないのである。


【ひとりになりたい】


「姉ちゃん……」


夕妃は走り書きのメモを朝陽に押し付けると、弟の手を振り払って、部屋を飛び出していた。



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