イジワル社長は溺愛旦那様!?
「あ、僕に書いていいと言ったのに」
神尾はクスッと笑うと、
「夕妃さん、前から思ってたんですが字がきれいですね」
夕妃の手に顔を近づける。
(褒められた……)
少し嬉しくなって、夕妃はまた手のひらに文字を書く。
【小、中、高とずっと書道を習っていたんです】
「そうだったんですか。道理で。今は?」
【働き出してから教室を辞めてしまいました】
それだけ書くと、夕妃の手のひらは文字でいっぱいになってしまった。
「あ、ほら、もう書けなくなった」
神尾がいたずらっ子のような顔をしてクスクスと笑う。
【まだ手の甲があります】
むきになって手の甲にそう書くと、
「あなたは負けず嫌いだな」
と、神尾がまた笑う。
「でもここもすぐに埋まってしまいますよ」
神尾の長い指が、夕妃の手の甲の、文字の下を撫でた。