イジワル社長は溺愛旦那様!?
神尾の案内で、マンションから半径十分以内にある高級スーパーマーケットや、フラワーショップ、インテリア雑貨やセレクトショップを回る。
先ほどは少し嫌な空気になったはずだが、神尾はまったくそんな気配を見せなかった。
そんな神尾を見るたびに、彼はとても大人なのだと、夕妃は身につまされる。
単純に憧れるというよりも、気が引けて仕方ない。
「――喉が渇きましたね。あそこでお茶を飲みましょうか」
そんな些細な夕妃の変化に気が付いたのか、神尾が立ち止まった。
彼の目線の先には、おしゃれなオープンカフェがある。
平日の昼間という時間のせいか、若い主婦層が多いようだ。
神尾は周囲から少し離れた席へと向かい、夕妃のために椅子を引く。
「どうぞ」
かなり手慣れた様子だ。
(あ、ありがとうございます……)
夕妃はペコペコと恐縮しながら椅子に座った。
神尾はすっと椅子を押して、それから夕妃の斜め前に椅子をずらして自分も座る。
(っていうか、神尾さん、すごく目立ってるし、見られてる……)
あちこちを回っていて気が付いたが、神尾が通りを歩いているだけで、女性がさりげなく神尾の姿をチェックするのだ。