イジワル社長は溺愛旦那様!?
「美味しそうですね」
頬杖をついてにっこりと笑う神尾に、夕妃は内心首をかしげる。
(また私に気を使ってくれているのかな……?)
やがてふたりの目の前に、たっぷりの生クリームとフルーツがトッピングされたパンケーキとアイスティーが運ばれてくる。
(これは……すごい!)
「ふふっ、すごいですね。さぁ、暖かいうちにどうぞ召し上がってください」
神尾に促されて、夕妃はうなずきパンケーキにナイフを入れる。
生クリームごと口の中に入れると、幸せの味が口の中いっぱいに広がった。
(おいしい~!)
ここ数日あまり食欲がなかったはずなのに、歩き回ったせいかおなかが空いていたようだ。
美味しい美味しいと、夢中でパクパクと食べていると、ニコニコしている神尾と目が合った。
(あっ……シェア……)
慌てて手元を見ると、もう、ない。
サーッと血の気が引いた。
(ごめんなさい、すみません!)
「いいんですよ。ほらここクリームがついてる」
神尾がペーパーナプキンを手に取って、夕妃の口元をぬぐう。まるで子供扱いだ。
すると神尾の背中の向こう、少し離れたところに座っている女性たちが、顔を寄せてくすくすと笑うのが見えて、夕妃はいよいよ落ち込んだ。
(そうだった……。私は神尾さんにとって、拾った猫で、小さな子供扱いも同然なんだ……)
当然だが対等ではないのだ。