イジワル社長は溺愛旦那様!?
マンションの部屋に戻る帰りのエレベーターは、高層階とまたほかの階で使用するエレベーターが違うようだった。
ふたりで乗り込んだ後、夕妃は内心深いため息をつきながら、うつむき履いているパンプスを見つめる。
(対等じゃないなんて、当然なのに……)
神尾と自分は、助けるものと、助けられるもの。相手から与えられるのは百パーセントの善意だ。純粋に受け取ればいいのだろう。けれどどうしても朝陽のように割り切れない。
(逆に、なにか差し出せるものがあるなら、差し出したほうがもっとすんなり、受け入れられたと思うのに……)
「夕妃さん」
神尾から名前を呼ばれて、夕妃は顔を上げる。
気が付けばエレベーターの扉が開いていた。
「どうぞ」
(気が付かなかった……)
夕妃はペコッと頭を下げて神尾の隣を通り過ぎる。
エレベーターを降りたすぐ前が広い玄関フロアになっており、当然この階に降りるのは神尾しかいない。
部屋の中に入ると、リビングのテーブルの上に朝陽からのメモが置いてあった。
【彼女と会ってきまーす】
(えっ!?)
メモを片手に固まる夕妃の背後から、スーツの上着を脱いでベスト姿になった神尾が覗き込んでくる。
「彼女?」