イジワル社長は溺愛旦那様!?
(どうしてこんなことに……っていうか、朝陽くん未読スルーするし……ほんと、ワザとなのかも……)
【いつ帰ってくるの】とか【急に出て行くってどういうこと】とか、朝陽にさんざんLINEでメッセージを送ったのだが、見てすらいない。
まさかと思いつつ、夕妃はぼんやりとキッチンに立って、鍋の中のビーフシチューを見つめていた。
あれから神尾は『仕事に行ってきます。遅くなると思うので気になさらず』と言って出かけていった。
そういわれてみれば彼は朝からスーツ姿で、いかにもできるビジネスマンという雰囲気だった。
もしかしたら自分たち姉弟をこの部屋に案内した後、そのまま仕事に行く予定だったのかもしれない。
なのに自分が部屋を飛び出したりしたから、彼は自分を探しに行き、なおかつ案内すると称して、気分転換に付き合ってくれたのではないだろうか。
(だったら私、最悪にもほどがある……)
なにからなにまで面倒をかけてばかりで、本当にいたたまれないし、常に穏やかな神尾の笑顔を思い出すだけで、己のふがいなさに地団太を踏みたくなってくる。