【完】八月は、きみのかくしごと


 「だって犯罪を犯したわけじゃないのに。誰かをいじめたりもしてないよ?」

 そんな判決、納得出来ない。不当だ。

 「罪とは犯罪と呼ばれる類いのものだけじゃないんだぞ。日々、生きているなかでお前が知らず知らずのうちに重ねている罪だ」

 生きているなかでわたしが罪を犯しているってこと?  
 わたしはただ毎日を生きているだけだ。他のひとと同じように。

 もちろん、法に触れるようなこともしていない。


 「だから、なにそれ。そんなのわからないよ。わたしの罪ってなに?」

 「それを見つけてくるんだよ。まぁ、お前の罪状は、命の無駄遣いだ」

 真っ直ぐにわたしを見つめて答えた。

 「は?」

 思わず気の抜けた声が出る。

 命の無駄遣い?  

 わたしが命を粗末にしていると言われたように感じる。 

 命について考えたことがないわけではないが、それが罪だからあなたは地獄行きです、と言われても到底受け入れられない。

 納得いかない。
 
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