【完】八月は、きみのかくしごと
◇
サンダルに足を突っ掛けてそそくさと家を出ると、真夏の太陽がギラリとわたしを照らした。
まるで責めるかのようにわたしを睨んでいる。
逃げるな、と責め立てるように。
「どうしよ……」
まだ約束の時間よりもずいぶん早い。困った。
スマホも置いて出てきちゃったから奏多の家に電話も出来ない。
むしろ、このまま家に行っちゃおうかな?
その方が電話するよりも早いし。
……いや、やめた。
奏多の家に行けばすぐにでもトキさんのところへ行こうと言われるかもしれない。
それはつまり、御門屋での滞在時間が長くなる可能性が高い。意地悪ばぁさんの愚痴を聞く時間は短い方がいいに決まっているしね。
自分で結論を出しわたしは決めた。
トモちゃんのところに行こう。
空き地に差し掛かると、ボールが跳ね返る音が聞こえてきた。
「あ……」
きっといるであろう人物が容易に想像出来て速度を落とす。
なんてタイミングだ……。
でも、ここを通らなきゃトモちゃんのところへは行けない。
恐る恐る足を進めると案の定空き地には陸がいた。
キシキシ傷んだ髪が夏の陽射しを浴びてキラキラ光る。
中学時代の部活のTシャツを着ているけど、汗でびっしょりだ。
知らん顔して通りすぎようとした。
けど……奏多との話が脳裏を過る。
秋に試合に出ると宣言した陸のことを嬉しそうに話していたっけ……。
身体を空き地へと向けると、わたしの気配を感じたのか陸も同じようにこちらを向いた。
「よお……」
ぶっきらぼうに手を挙げる陸に目を細くした。