【完】八月は、きみのかくしごと
わたしだってそれくらい知っている。
「まぁ、そのつもりでやってるけど」
「うん」
サッカーボールを触る手をピタリと止めた。
「もう夏希が口きいてくんねぇかと思ってたよ」
陸は自嘲の笑みを含ませながら言った。
「それは、わたしだって……」
きっと終業式の日のことを言ってるんだ。
ちょっと気まずいな、とわたしは目を伏せる。
「……ごめん。後回し星人とか言って」
「えっ?」
驚いたわたしは思わず陸を見た。
「あのとき俺、イライラしてたっつぅか……」
「イライラ?」
「時間が全然ねぇやって思って、なんか焦っててさ」
日に焼けた横顔に一粒の汗が流れ落ちていく。
サッカーのことで悩んでいたのだろうか。
陸のことだからきっとそうなのだろう。