【完】八月は、きみのかくしごと


 わたしだってそれくらい知っている。

 「まぁ、そのつもりでやってるけど」

 「うん」

 サッカーボールを触る手をピタリと止めた。

 「もう夏希が口きいてくんねぇかと思ってたよ」

 陸は自嘲の笑みを含ませながら言った。

 「それは、わたしだって……」

 きっと終業式の日のことを言ってるんだ。

 ちょっと気まずいな、とわたしは目を伏せる。

 「……ごめん。後回し星人とか言って」

 「えっ?」

 驚いたわたしは思わず陸を見た。

 「あのとき俺、イライラしてたっつぅか……」

 「イライラ?」

 「時間が全然ねぇやって思って、なんか焦っててさ」

 日に焼けた横顔に一粒の汗が流れ落ちていく。

 サッカーのことで悩んでいたのだろうか。

 陸のことだからきっとそうなのだろう。


< 104 / 185 >

この作品をシェア

pagetop