【完】八月は、きみのかくしごと


 「……夏休みがずっと続けばいいのにな」

 「あれ? 試合に出るんでしょ? 夏休みが終わらなきゃ秋はやってこないじゃん」

 「ははっ。確かに」

 陸は笑った。けど、それは乾いた声だった。

 「なぁ、夏希。奏多からなんか聞いてるか?」

 「なんかってなに? 計画書のこと?」

 「は? 計画書ってなんだよ、それ」

 「んー、奏多のやりたいことらしいよ。今それに付き合ってるんだよね」

 陸の目が微かに泳いだ。

 「他には……?」

 「え。別にないけど。なんでよ?」

 陸をチラリと見ると遠くの方をぼんやりと見ている。

 「陸はなんか聞いたの?」

 「いや……」

 ようやく返事を返してくれたけど、どこか上の空みたいだ。

 「それより、凛子から聞いた? 通り魔のこと。陸にも話したかったみたいだよ」

 「テレビで見た。まだ捕まってねぇんだってな」

 口ではそう言いつつも頭では違うことを考えているように見える。


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