【完】八月は、きみのかくしごと


 「わかってるよ……」

 「本当にわかっているか? 過ちも見つけてくるんだぞ?」

 「わたしの罪でしょ?」 

 「そうだ。だが、罪を見つけたと同時に、大事なことに気づけた人間もいたぞ。お前はどうだ」

 わたしはうっすらとだけど見えてきたことがある。

 きっとわたしは大切なことにまだ気づけていない。

 今までならそんなことそのうち見つけるだろうと思って特に気に留めなかった。

 でも、それが一体なんなのかはわからないど、最後の夏に見つけなきゃ取り返しのつかないことになりそうで、気持ちが焦る。

 「それって、いじめをした人間や、嘘つきな男の子のこと?」

 「ああ。そうだ」

 一体どんな理由を見つければ戻れるの?

 悪いことをしたのに、なにに気づいたっていうんだろう。
  
 「ねぇ、鬼丸……今のわたしは、生きる必要があると思う?」

 そう聞いたのは、やっぱり気持ちが焦っていたからだろうか。

 それに、今の自分の姿がどんな風に映るのか、自分じゃ見ない。


 鬼丸の姿は見えないけれど鬼丸は近くにいるような感じがする。

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