【完】八月は、きみのかくしごと


 「……で、なに話してたの?」

 「話っていうかトキさんの愚痴だよ。最近の若者は怒りっぽいとかでご立腹」

 「ふぅん……」

 わたしからすればトキさんはいつも怒った顔をしてるじゃない。

 喉元ででかかった言葉を呑み込む。口にして聞こえたら大変だ。


 「テレビでニュース見てたみたいだぞ。物騒な事件ばっかりで嫌になるんだってさ」

 「今の時代に限ったことじゃないがね。昔だってそうさ」

 口をへの字にしたトキさんが突然戻ってきたからドキリとした。

 「あんたはこれに座りな」

 「すみません……ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げて用意してくれた丸椅子にそっと腰かける。

 「トキさん、昔って?」

 奏多はさっきのトキさんの話に質問する。

 「あんたらに話しても仕方ないさ」

 「俺は聞きたいよ。なんでトキさんが若いひとが嫌いなのか知りたいし」

 ビクビクするわたしと違って臆することなく奏多は立ち向かっていく。

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