【完】八月は、きみのかくしごと
第八章:『母親』
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七草神社の夜祭りは毎年お盆が過ぎた次の週に行われる。
テレビで見るような大きなお祭りではないけど、屋台がたくさん並ぶし、子供達のために小さな花火だって数発打ち上げられる。
商店街のひと達は忙しそうに準備をしていた。
今年は行けるのかわからない。
その日は八月二十五日で、わたしが事故に遇った日だから。
夏休みが終わる最後の日までわたしはここにいたい。
そのためにも事故に遇うことだけはなんとしても回避しなきゃいけない。
事故にさえ遇わなければきっと大丈夫だ。
わたしの行動ひとつで過去を変えられるかもしれない。
鬼丸がそう言ったんだから。
不安を消すように言い聞かせた。
けど、罪を見つけないとこの夏どころかこの先も生きていくことは出来ないだろう。
鬼丸が許してくれない。
わたしが見落としている大切なもの。
きっと、すごく忘れちゃいけないもの。
ーーーピンポーン
そのとき家のチャイムが鳴った。