【完】八月は、きみのかくしごと


 「ごめんごめん。いきなり電話して。祭りまでまだ時間あるよな」

 「うん。平気」

 たった数日会わないだけで久しぶりに会った。

 そんな気持ちになる。

 わたしは普段通りの声を出せていたかはわからない。

 きっと奏多も。

 
 「それ、なに?」

 奏多は左手に青いラインの入ったノートを持っていた。

 年季が入っている。長い間どこかにしまわれていたみたい。

 そんな可哀想なノートに見える。

 
 「ああ……」

 奏多は眉を下げるだけでそれがなにかは答えない。

 「あそこ座ろっか」
 
 お土産を届けてくれた日、一緒におまんじゅうを食べたベンチを奏多が指差した。

 ベンチに座ると肩と肩がぶつかりそうになる。


 胸の奥がキューッと苦しい。

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