【完】八月は、きみのかくしごと
◇
家に帰るとお父さんはまだ配達から戻ってきていなかった。
今日はとても長い一日だったな。鬼丸に会ったことさえ夢だったんじゃないかなって思う。
けど、わたし、ホントに過去に戻ってきてるんだ。
部屋に戻ると熱気が充満していたから、窓を空けて外へと逃がすと、ベッドに身体を沈ませた。
わたしが夏休みをやり直しているなんて誰も思わないだろう。もちろん奏多も。
今日、奏多と会ったときもとても自然に話しが出来たはず。いつも通りだった。
もし、わたしが奏多に会いにいこうと思わなければ、奏多から話を持ちかけらることもなかったのかな。ダラダラと過ごして気づけば夏休みが終わっていたかも。
それに、わたしの二度目の夏休みが終われば、もう奏多に会えないかもしれないんだ。
「これが最後になるのかな」
そう思うと苦しかった。