【完】八月は、きみのかくしごと


 「ナツ、これが俺のやりたいことリスト」

 なんかのノートの一ページを破ったであろう紙は四つ折りになっていた。その紙を開いて広げる。

 『最高の夏休み計画書』

 マジックペンでデカデカと書かれている。小学生の頃から変わらない字に口許が緩む。

 「これにわたしが付き合うの?」

 「そういうこと。退屈なんだろ?」

 奏多が口角を上げて笑う。

 
 こんな紙、過去に見せられた記憶がない。

 最後のお楽しみにとさくらんぼを避けてアイスクリームを口に入れながら思った。身体のなかが心地良く冷たくなる。

 「ねぇ、どこが最高の夏休み計画書なの? ただの予定表みたいだけど」

 箇条書き形式で奏多のやりたいことがいくつも並んでいる。

 『トモちゃんの喫茶店でクリームソーダを頼む』も、そのうちのひとつらしい。

 わざわざ書く必要もない気がする。

 他に、気になる名前がいくつかあったが触れなかった。


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