【完】八月は、きみのかくしごと
◇
「ねぇ……やっぱりもう明日にしない?」
暑い。暑すぎて耐えられない。日焼けして父さんみたいに真っ黒になるのはごめんだ。
それにもう十分あちこち回ってみたけど陸はどこにもいなかった。
旅行にでも行ってるんじゃないのと聞いたけど、奏多は首を振った。
「夏休みはいつもサッカーやってたから」
奏多が懐かしむように言った。
「それは子供の頃でしょ。今はサッカーやってないじゃん」
それにいくら狭い町でも探して必ず会える保証なんかないんだし。
「空き地はまだ行ってないだろ? たぶんそこだ」
微塵も諦める気配がない。
「だから、サッカー辞めたじゃんって。空き地にはいないでしょ」
空き地は陸の練習のスポットだった。鬼ごっこをした場所でもあるけど。
「きっといる。もしいなかったから、明日にするよ」
「わかったよ」
なんとしても今日、陸に会わなきゃいけないみたいに奏多は歩き出した。