【完】八月は、きみのかくしごと




 「ねぇ……やっぱりもう明日にしない?」

 暑い。暑すぎて耐えられない。日焼けして父さんみたいに真っ黒になるのはごめんだ。

 それにもう十分あちこち回ってみたけど陸はどこにもいなかった。

 旅行にでも行ってるんじゃないのと聞いたけど、奏多は首を振った。

「夏休みはいつもサッカーやってたから」

 奏多が懐かしむように言った。

 「それは子供の頃でしょ。今はサッカーやってないじゃん」

 それにいくら狭い町でも探して必ず会える保証なんかないんだし。

 「空き地はまだ行ってないだろ? たぶんそこだ」
 
 微塵も諦める気配がない。
 
 「だから、サッカー辞めたじゃんって。空き地にはいないでしょ」

 空き地は陸の練習のスポットだった。鬼ごっこをした場所でもあるけど。

 「きっといる。もしいなかったから、明日にするよ」

 「わかったよ」

 なんとしても今日、陸に会わなきゃいけないみたいに奏多は歩き出した。


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