【完】八月は、きみのかくしごと
「前に聞いたんだってば。てか、なにがまずいのよ。早く説明して」
痛いとこを突かれたような気持ちになってわたしは語気を強めた。
「それは凛子の相談をまだ聞いてないことだよ」
「は? そんなの、ハワイから帰国したら聞けばいいじゃん。もう会えないわけじゃないんだし」
そんなことか、とわたしは溜め息をつく。
同時に悶々とした気持ちが沸き上がり、さっきよりも声が大きくなった。
なぜわたしがこんな声を出さなきゃいけないのか。
奏多を盗み見ると傷ついたような表情をしていた。
「ナツの言う通りだけどさ……俺にとってはまずいんだよ。相談も、ハワイに行く前にちゃんと聞いておきたい」
「ふぅん。てか、凛子の相談になんでわたしまで立ち会わなきゃいけないの?」
二人で話せばいいじゃん。
凛子が相談相手に選んだのは奏多だ。わたしじゃない。
「凛子がナツを怒らせたって悩んでたぞ。おばさんの話をしたら怒っちゃって、嫌な思いさせたんじゃないかって……」
奏多の声が徐々に小さくなっていく。
電話のときと同じように。