【完】八月は、きみのかくしごと
わたしを見上げる凛子。
そっか。わたしとは気まずい雰囲気になってしまったから奏多に相談したかったのかな。
「怖いよね。本当に……早く、捕まってほしいな」
凛子は不安げに声を震わせた。
隣町で起きた通り魔事件の被害者は、わたし達と同じ高校一年生の男子生徒だったらしい。
すれ違い様に鋭利な刃物で刺されたとテレビで流れていた。
わたしはそのとき、自分じゃなくてよかったと不謹慎にも思った。
「……ああ。なにが起きるかわかんねぇもんな。俺らも気を付けようぜ」
「うん……なっちゃんもね?」
胸の前で両手を重ねる凛子がわたしの顔を覗き込んだ。
「大丈夫だよ。この町は誰かしら外にいるし、殺人犯って人相も悪いっていうじゃない? 怪しい奴がいたら、すぐわかるよ」
そう答えると、凛子は心底心配したように俯いた。