【完】八月は、きみのかくしごと
「トモちゃんは、ひとりで寂しくないの?」
何気なく聞いた質問にトモちゃんの動きが一瞬止まった。
「寂しくなんかないわよ。それよりあんた、どうせ退屈だから来たんでしょう? 夏休みだからって」
学校の先生のような口調で言うトモちゃんはやっぱり普段のトモちゃんだ。
「いつもは退屈だけど、今日は洗濯したし、そんなに退屈してないんだなぁ」
カウンターに肘を乗せてこちらを見下ろすトモちゃんに、わたしは少しばかり得意気に返した。
「なに威張ってんのよ。あんたの母さんは毎日やってたんだから。まったく」
はぁっ、と呆れたような深い溜め息が返ってきた。
わたしの主張はトモちゃんには効果なし。空振りだ。
反論の余地もなくわたしは首をすぼめた。