【完】八月は、きみのかくしごと


 自分自身で口にしてみると声が震えた。

 「バカ言ってんじゃないよ。あんたはまだ高校生でしょ? これからもっともっと生きて、親孝行するんだから」

 「それ、わたしに出来るのかな……」

 「出来るのかなじゃないの。するのよ。あんたが出来ることを」

 わたしに出来ること、と口のなかで繰り返す。

 「私はね、意地悪を言いたいわけじゃないんだよ。ただ、あんたの母さんは……里子は、今もあんたのことを見守っているだろう? 私はそう思うんだよ」

 お父さんもトモちゃんも母さんのことが、大好きなんだね。
 
 わたしとは違う。

 だから母さんの話をするのだろう。

 「……そうなのかな」

 「そうさ。だから、明日明日って口癖はやめなさいよ」


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