【完】八月は、きみのかくしごと


 わたしは面食らった。

 サイダーの缶を手にする奏多にわたしは首を傾げた。

 だって、わたしと話すことがやりたいことだなんて、いつでも出来ることなのに。

 言われて、嬉しいけど。

 奏多の横顔を見つめていると不意に振り返る。

 「なんだよ? 変なこと言った?」

 「別に……」

 そう答えたもののいつもの奏多らしくないとは感じていた。

 気のせいかもしれないけれど。

 「あ。俺も嬉しいことあったよ。陸がまたサッカー始めるんだって」

 「え? ホント?」

 「ああ。ここに来るときも空き地で見かけたんだ。夏休みが明けたら、影森のクラブチームに入れてもらえることになったんだって」

 「よかったね。陸ならすぐに試合に出れそう」

 自分のことのように奏多は喜んでいる。


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