【完】八月は、きみのかくしごと


 「どんなひともちゃんと話してみないとわからないだろ? ホントは、優しいかもしれないし、なにか思うことがあるのかもしれない」

 それを知ったからってなんだっていうのだろう。

 わからない。


 「奏多は、トキさんに良く思われたいの?」

 自分が思うより低い声が出た。

 それに嫌な言い方になってしまった。

 慌てて奏多の顔を見ると寂しげに俯いた。

 「違う。ナツにトキさんのこと嫌いでいてほしくないんだよな」

 ぼんやりと呟いた声は蝉の鳴き声に掻き消されてしまいそうなほど小さかった。

 「……なんで?」

 「そう思うからだよ。それに……」

 奏多の言葉の続きを待っていたけれど、奏多はなにも言わなかった。




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