【完】八月は、きみのかくしごと
だからわたしもそれ以上は追求しなかった。
「悪いな」
心底申し訳なさそうに奏多は目を伏せる。
そんな顔をしないでよ……。
「一回だけだからね。一緒にトキさんのところに行くのは、これっきりだから」
弱々しく笑う奏多を見ていたら頑なに突っぱねることは出来なかった。
渋々返事をするわたしに奏多は「サンキュ」と言ってサイダーの缶を渡してきた。
ずいぶん温くなってしまったけど炭酸はまだきいていて、一気に流し込むと喉の奥が苦しかった。
どちらともなく立ち上がり土で出来た細道を歩く。
滑らないようにバランスを取るわたしを、奏多は時折振り返って笑っていた。