【完】八月は、きみのかくしごと
◇
その日の夜の風は奏多がお土産でくれた風鈴を優しく撫でるように揺らした。
でもわたしには、チリン、と奏でる音がやけに悲しく響いた。
なぜか奏多が泣いているような気がして、わたしまで泣きそうだった。
どうしてそんなことを思ったのかと聞かれてもわからない。わたしは答えられない。
けれど、もしかしたら、今日の奏多の顔が寂しそうだったからかもしれない。
『最高の夏休み計画書』
奏多はどんな気持ちでわたしに見せてきたのだろう。
夏休みという時間を、どんな思いで過ごしているのだろう。
トモちゃんはわたしに後悔してほしくないと言ってくれたけど、わたしは大切なことを、どこかで見落としている気がした。