雪と初恋
学校といえば、小中が一緒になった分校が一校あるのみで、高校はバスで三十分ほどのところにようやく一校。

村の高校生は、下宿を借りてもっと他の学校へ行くのが普通らしい。

しかし、父親の失業に伴う転校、となるとひとり暮らしがしたいなどと我が儘がいえるはずもなく、仕方なくその一校しかない、最寄りの高校に通うことになった。
 

初日の朝は母親の運転する車で登校した。
各学年に一クラスしかないという、信じられない状況に困惑しつつ、担任に連れられて二年の教室へ行く。
当たり障りのない自己紹介をして、示された窓際一番後ろの席に着いた。
僕の前の席の子はお休み中だった。

……うん。
文字通り、お休み中。
欠席ではなく、眠っている。
僕が教室に入ってきたときからずっと。

そのうち授業が始まった。
田舎の寂れた学校の授業は恐ろしく程度が低く、もう既に元の学校では終わったことをやっていた。

朝が早かったせいか、うとうととしながら授業を聞く。
前の席の子は授業開始の挨拶に立つこともなく、引き続きお休み中だった。

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