恋愛白書
「そんな恥ずかしいセリフ言えるかよ」


背を向けたまま言う。


「俺これから後輩の家で打ち合わせなんだ。今は話してる暇ないんだ。ごめんな?」


丈があたしの涙を拭う。


「わかった」

「夜電話するから」

「…うん」


あたしが返事すると丈は走って行った。

きっと遅刻寸前だったんだね。


丈が走っていく姿が見えなくなるまで、その場にいた。


ほんとにあたしは丈が好きだな。
大好きなんだ。


一目惚れして
付き合って
別れて。
でも、やっぱり好きで。

一目惚れしたときなんて、丈の顔わかってないからね。

なのにこんなにも
丈の存在が大きくなってるなんて。


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