恋愛白書
「あの…」

「はーい?」

お母さんが返事をする。

「トイレはどこですか?」

「そこ右に曲がったとこだけど、よくわからないから、やしな教えてあげて?」


お母さんが娘らしき女の子に言う。
死角になって見えないが

"やしな"


そう言ったのは聞こえた。

こんな偶然ないと思う。
同じ名前なだけじゃないと思う。

それだけで俺の心をどきどきさせるには十分すぎた。


女の子がドーナツを加えてひょこっと顔を出す。


━━ドサッ


やしながくわえていたドーナツを落とす。


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