恋愛白書
「丈くん!これあげる!」


少し後ろから篠原さんの声。

あたしはその声に振り向いてしまった。

振り向かなきゃよかったのに。


「おー!カッコいいじゃん!」


丈が手にしていたものにあたしの頭が真っ白になる。


あたしがさっき丈に買ったものと同じもの。

キーホルダーなんだけど、丈が好きそうで。
喜んでる顔が見たくて。

なのになんで同じものを貰ってるの。

同じものなんて誰も知らないし。
誰も悪くなんてないのに。
もう感情がなくなってしまいそうだった。


あたしはその場にしゃがみ込む。


「やしな!?」

まちゃがあたしの様子に気づいて駆け寄ってくる。


「ちょっと限界」


あたしはそのままうずくまる。


「ちょっと待ってろ」


神谷くんが走り出す。


「おい!」

「なんだよ…」

「後ろを見ろよ!」


神谷くんの相当な怒鳴り声と
めんどくさそうな丈の声がきこえる。



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