恋愛白書
「丈くん!」


前方から篠原さんが駆け寄ってくる。

この人はいつもあたしたちのところにやってくる。
何でいつも邪魔するの?


「篠原…」


丈が少し動揺してる。

そうだよね。
さっき告られたんだもんね。

今さっきのことなのに動揺しないわけないか。


「あー!丈くんこれ!してくれてるんだね!」

丈のカバンに付けてるキーホルダーを触る。


あたしもあげるはずだったあのキーホルダー。

あたしが渡せなかったキーホルダー。

篠原さんの明るい声があたしの頭には痛い。

他の女からもらった物を見えるとこに付けないでよ。


「これは…」

丈が何か呟いてる。
篠原さんに。


「あたし、一人で乗る!」


丈と繋いでいる手を離す。


「やしな!待てよ!」


背後から丈の声がする。
あたしは振り向かない。

もう嫌だ。
篠原さんと一緒のところなんて見れない。


一人で乗るくらいなら、乗らない方がマシかな。

夢だった函館山。

諦めたくない。

よし!
乗ろう!
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