恋愛白書
━━バリーンッ


「あっ」


すごい音とやしなの声。


やしなが持っていたグラスを落としたらしい。


「ご、ごめん!拾う!」


とやしなの姿が見えなくなる。


「痛っ」


破片が刺さったのか痛がってる様子が伝わる。



そっとたちあがろうとした。


「やしな!」


俺の好きな女の元に走る足音。


その声も足音も俺から出たものではなくて。


「っ」


俺はどうしてこう遅れてしまうんだ。
本当なら俺が助けたかった。


俺はただふたりのやり取りを見てるだけ。


自分のチキンさにいい加減腹が立つ。


「え!?そんな痛い!?」


あいつの声が耳に響く。


「あー!もうお前触るな!」


やしなの代わりに破片を拾ってるらしい。


キッチンの影だから
俺からはふたりがどんな風にしてるのか
どんな表情なのか。
どれもわからない。


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