恋愛白書
「違うの!」


やしなが泣きそうな顔になる。

嫌な予感しかしなくなってくる。


「ん?他になにかあるのかー?何か悪いことしたんですかー?」


そんな考えを払拭するようにやしなの頬をつねる。


「実は競技大会の日に指輪なくしちゃったの」


やしなが俺の顔を見つめる。


「は?」


予想外の言葉に思考がとまる。


「いえなかったの、探したんだけどね。ゴメン」

「そっか」


俺はそれ以上言葉を発せなかった。

別れ話をされたわけじゃない。
でもあの指輪は俺にとってすごい大事なものだったから。

別れ話よりもつらいものだったかもしれない。

最初から言ってくれていたらまた違ったかもしれない。

なんで嘘ついたのか。

そう自分から聞けばいいのに
俺は肝心なことが言えないし聞けない。

俺たちはそのまま無言で学校に着いた。


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