恋愛白書
「おはよー」


行き交う挨拶にも全部スルーをして学校に入る。

誰とも話したくねぇ。


体験学習でヨリを戻すことを信じて
あそこに行く前に買ったんだ。

俺は自分についている指輪に触れる。
ふたりでつけてないと意味ねーじゃん。

はずせばいいのかな。
右手の薬指に佇むその指輪。
はずせるわけなんてなかった。


━━クイッ


階段を上ろうとしたところで制服の裾を引っ張られる。


「...っ」


やしなが引っ張っていることはわかっていた。
でも、どうしたらいいかなんてわからなかった。


「丈、シカトしないで」


後ろから不安な色が混じった声が聞こえる。


「ごめん。色々考えさせて」


このままそばにいることなんてできずに。
階段を走る。


一気に階段を駆け上がって
あっという間に教室につく。


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