恋愛白書
「...何?」


ほんとはさ。
こんな言い方したくないのに。

やしなと話せることが嬉しくて仕方ないのに。

俺から出る言葉は冷たい。


「あのね!指輪!見つかったの!」


やしなが薬指をみせてくる。


「え?」


びっくりして思考回路が停止する。


「委員会の後輩が拾ったんだって。陸上競技会のとき。それ以降委員会なくてさ、渡しそびれてたみたいなんだ!」


やしなが嬉しそうに話す。


「後輩?」

「うん。あの競技会のときに会ったでしょ?祐樹の友達」

「ああ...」


競技会で会ったあの後輩を思い出す。


かわいいって言ってたやつだよな。
やしなのこと。

それだけで俺のモヤモヤは募る。


指輪が見つかったことが
嬉しく感じなかった。

どうしてもそいつが見つけたってのが嫌で。

素直じゃない俺はまたやってしまうんだ。


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