恋愛白書
「証拠は?」


気がついたらそんなありえないことを口にしていた。


「え?」


やしなのぽかーんとした顔が見える。
そんな顔もかわいいのに。

俺は簡単にそれを言わせてくれない。


「これがあの指輪だって証拠だよ」

「証拠って」


やしなが困った顔になる。


「ないならわかんねーな」


俺はそのまま部活に戻ろうとする。


「名前!名前ほってあるよ!ホラ!丈の名前!」


やしなの声にもう一度振り向く。


うん。
そうだね。って言いたい。

でも、いえない俺はほんとにバカだと思う。

自分の指にもついてるその指輪。

俺のほうにはやしなの名前が刻まれている。


「丈?」


何も言わない俺に不安そうな顔をしてる。


< 409 / 447 >

この作品をシェア

pagetop