恋愛白書
「篠原さん」


後ろからやしなの冷めたような声が聞こえる。


「え?」

「こっちあげる」


やしなが自分の薬指から指輪をはずす。


…はめてたんだな。


「は!?同じやつ!?」


篠原が手元にある指輪とやしなが見せている指輪を見比べる。


「ペアリングかよ」


神谷がぼそっとつぶやく。


「もう、いらないから!」


やしながそう言ったかと思えば
指輪を俺に投げつける。


「痛っ」


落ちた指輪を拾う。


そんな痛みなんかより
たぶんやしなの痛みのほうが痛いんだろな。


ふとやしなを見ると今にも泣き出しそうな顔をする。


「…やしな」


俺はやしなに手を伸ばす。


「丈のバカ!」


やしなが叫ぶと同時に席から立ち上がる。


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