恋愛白書
「絵里香!」


空き教室で外を眺める絵里香に向かって声をかける。


「丈!」


振り向いて俺の顔を見るなり笑顔になる。


「まーた兄ちゃんと喧嘩?」


壁によりかかり聞く。


「…うん」


"兄ちゃん"


その単語を出すだけで表情を崩す。


いつだって。
目の前にいるのに考えているのは兄ちゃんのこと。


「…今度はなに」

「些細なことだよー。今日一緒に蒼くんが帰れないって言うから」


絵里香がふくれっ面になる。

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