恋愛白書
今までの丈のキスはすべて優しいものだった。

今日のはいつもよりも一段と深い。

いいかわからなかった。

「俺だって、ずっとしたかったんだよ」


丈が赤くなりながら言った。


「…丈」


あたしはまだまだ幼くて。
男の子の気持ちとか何もわからない。

男の子の


『したい』


それが何を意味するのか何もわかっていなかった。

まだまだ中学三年。

ずっとずっと先のことだと思っていた。

でも周りの人たちが

どんどん、大人になっていたことを
あたしも丈も何も知らなかった。

まだまだ未熟な二人だから。

そういうことを知るのはもう少し後の話。

今はまだ


『好き』


そう言うだけでよかった。


『好き』

それだけで十分だったんだ。


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