恋愛白書
「なんて呼んでるの?」

「は?」


絵里香の言ってる意味が理解できない。


「だーかーら、やしなちゃんのこと」

「何も」

「は?」

「名前で呼んだことないし、呼ぶ機会もない」


俺だって呼びたい。

俺がやしなって呼んで振り向いてほしい。


脳裏に笑顔で振り向く彼女が映る。


「はい、練習」


絵里香が俺に向けて指を出す。


「練習?」

「呼び捨てはハードル高いから」


"まずはやしなちゃんで"


そう付け足した。


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