チューリップ
『キーンコーンカーンコーン……』
それからまた机で寝ていると、朝礼始まりのチャイムが鳴って目が覚めた。
いつもなら口うるさい担任が教室へ来て、たるそうに出欠をとる。まぁ、そいつはもうやめたらしいけど。
「来ないねー。どうしたんだろ。」
「俺帰るわ。」
待ってるのがめんどくさくなって、陽介にそう言った。
「リュウ、もうちょっと待ちなって。」
陽介が俺を止めるなんて珍しくて少し驚いたが、陽介を無視して立ち上がった瞬間…
「おはようございます!!すみません!そこの階段から落ちちゃって…。遅れてごめんなさい!!!!」
バンと大きなドアの音をたてて、女が入ってきた。
新しい担任らしい若い女は、教室に響くようなでかい声で叫んだ。
走ってきたのかスーツの襟は乱れてるし、茶色い髪の毛もぐしゃぐしゃになっている。
それでも割とかわいい顔立ちで、華奢な体型なのはわかった。
息を荒くしながら、立っている俺に気づいて不思議そうに見てきた。
俺は女にかまわず歩いて後ろの扉から教室を出ようとした。
「待って!どこ行くの?」
女は俺に向かって叫んだ。
教師は俺がこの世で1番嫌いな人種。
説教なんて吐き気がする。
「どこでもいいだろ。
遅れてきて指図すんじゃねぇ。」
俺が教師に対抗すんのはいつものこと。クラスの奴らは気にするそぶりもなく、各自好きなことをやってる。
俺は女にそう言ってもう1度教室を出ようとした。
すると…
「どこでもよくなんかない!!!
遅れてきたのは謝るけど、サボる理由にはならないでしょ!!」
女は荒い息をさらに荒くして叫んだ。
いつもの教師は俺の行く場所なんか気にしなかったから、俺はいらついて女を睨んだ。
いつの間にかうるさかった教室は静まりかえっている。