チューリップ
頭が呆然とする中で俺は理事長室に向かう。



梨華に会いたい。



それしか俺の頭にはなかった。



早く梨華を見たい。

梨華に触れたい。



もしかしたらただの打ち身や軽いケガですんでいるのかもしれない。


もうまたあの笑顔を見せているのかもしれない。



でも俺の頭に浮かんでくるのは、屋上での梨華の顔。


寝転がる梨華の顔が頭から離れない。



あの顔を見たとき、手の届かないところへ行ってしまう気がした。



あの時の胸のざわつきがまたもや俺を支配していた。




とにかく梨華に会って、不安を消し去りたい。いなくなることなんてないと感じ取りたい。



俺は急ぐ気持ちを抑え理事長室のドアノブを握り、中に入る。




いや、入ろうとしたところで俺の手は止まった。



ドアノブに手をかけた瞬間、聞き慣れた声が漏れてきた。





「とり…ず…秘密を知ってる人が……よかった。


茉莉がいなかったら……大変なことに……たかもしれませんね。」




陽介か…?


何であいつがここに?



「えぇ…でも未成年だから保護者が必要になるし、2人には協力してもらうことになると思うわ。




梨華が18才だなんて皆にバレてしまったらパニックになるところだったわね…」






梨華が




18…………?
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