チューリップ
「梨華ちゃんが18才だって知っているのは俺と茉莉と理事長だけ。初めは俺たちも知らなかったんだよ。
つまり理事長は梨華ちゃんが18才だと知っていて雇ってたんだ。」
陽介はと表情を変えることなく話している。
淡々と話される真実は俺の頭を埋め尽くしていく。
この感情は何なんだろう?
秘密に対する驚き?
騙されていたというイラつきか?
わけのわからないモヤモヤが俺の中にたまっていく。
「〜♪〜♪〜♪」
沈黙していた部屋に軽快な音楽が流れる。
陽介のケータイの着信音だ。
陽介は俺をちらっと見てから少し離れ、電話にでた。
「もしもし?………そう、わかった。
いろいろお疲れさま。今理事長がそっち行ってるから…
うん、じゃあ後でね。」
電話を終えるとまた俺の方を向いた。
きっと今のは及川の報告なんだろう。
「梨華ちゃん、とりあえずは大怪我じゃないみたいだよ。
頭を打ってるからまだ目は覚ましてないけど、すぐ意識も戻るだろうって。
ちなみに、病院は学校から1番近くにある総合病院だから
行ってあげなよ…?」
そうか…。よかった。
確かにそう思ったはずなのに
嬉しいはずなのに、微笑むことさえ出来なかった。