チューリップ



ずっと会えない間も頭から離れることはなかった。


何度会いに行こうと思っただろう?


でもそのたびに自分の心を押し殺した。



なんとなく、俺はこうなることがわかっていたのかもしれない。


お前の存在は

大きすぎて


愛しすぎて


俺にさえどうしようもなくなっていたんだ…







「リュウ…」


梨華は俺の名前を消えるような声で呼ぶと、手を口に当てた。


目には涙がたまっているように見えた。



「リュウ…。


1週間ぶりだね…。」



そう言う梨華をよく見ると、額には大きなバンドエイド張られ、足には包帯が巻かれていた。

近くには2本の松葉杖が立て掛けられている。


痛々しい姿に顔がゆがむ。



大丈夫なのか?

復帰おめでとう。


何で黙ってた…?


言いたいことは山ほどあるのに、どれも言葉にならずただ沈黙が続いた。
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