チューリップ
唇が重なった瞬間、梨華の目が見開いたのがわかった。



でも、抵抗することはなかった。


ただ俺を握っていた手の力が少し弱くなっただけ。



俺はゆっくり梨華の唇から自分の唇を離した。


離れた後もその感触は消えることはなくて、それは俺を飲み込む。



次の瞬間、俺は梨華の手首持って壁に押しつけた。
片足で体を支えていた梨華は勢いよく壁にもたれ掛かる。



「リュウ…?」



不安げに首を傾げる梨華を無視して俺は梨華にキスをした。


今までの思いを満たすように、首、頬、唇、胸元、躊躇せずに俺の唇は梨華の体を這う。



何も考えていなかった。


頭なんか働くはずがなかった。




ただあいつを前にして、俺の思いはあふれだした。






「リュウ…」



再び梨華の口から漏れる声が震えているのがわかった。



「……梨華…。」




小刻みに震えている梨華の頬を大粒の涙がつたっていた。
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